2026年に入って、企業のAI活用は「とりあえず試してみる」段階から「業務に根付かせて、全社に広げる」段階へと関心が移ってきました。2026年6月1日には、SnowflakeとAnthropicが、企業の管理下にあるデータの上でAIを動かす「管理・統制の効いたAI」への需要が高まっていると発表しました。続く6月8日には、カーネギーメロン大学のソフトウェア工学研究所(SEI)とAccentureが、AI活用の成熟度を測る枠組みを公開しています。

この記事では、いま起きている「試したけど広がらない」という悩みと、そこを抜け出すための動きを、発注検討者の目線で整理します。技術の深い話ではなく、自社サービスにAIを組み込むときの進め方や、開発会社との話し方に効いてくるポイントに絞ってお伝えします。

ざっくり言うと:AI導入は、家庭菜園にたとえると分かりやすいかもしれません。苗を一つ植えてみるのは簡単でも、畑全体で安定して収穫できるようにするのは、また別の難しさがあります。2026年のいまは、「植えてみた苗(お試し導入)」を、どうやって「畑全体(全社の仕組み)」へ育てていくか、その段取りに注目が集まっている時期です。

お試し導入を畑全体に広げていくたとえ
「試す」から「広げる」への段階(イメージ)

ざっくり言うと何?

2026年の春から初夏にかけて、企業のAI活用に関する発表や調査が相次ぎました。共通しているのは、「AIを試す」こと自体はもう珍しくなくなり、論点が「どう成果につなげ、どう広げるか」に移ってきている、という点です。代表的な動きを並べると、こんな状況です。

背景には、少し前から指摘されてきた調査結果があります。米マサチューセッツ工科大学(MIT)が2025年に公開した「The GenAI Divide」という報告では、多くの企業がAIに投資しているのに測れる成果が出ておらず、自社で作り込んだAIのうち本番運用まで到達するものはごく一部にとどまる、と報告されました。この「試したけれど広がらない」状態を、どう抜け出すかが2026年のテーマになっています。

非エンジニアの方向けに言い換えると、ポイントは目新しい技術そのものではありません。むしろ「どのデータを使い、誰が確認し、どこまで広げるか」という段取りと、管理のしくみです。次のセクションで、発注側にとって何が変わるのかを整理します。

開発・サービスへの影響

1. 「試して終わり」を避ける段取りが、最初の論点になってきた

これまでは「まずは小さく試してみましょう」というお試し導入から始めるのが一般的でした。2026年に入って、その先の「どう広げて根付かせるか」を最初から考えておく流れが強まっています。SEIとAccentureの枠組みでも、成熟度は「探索」から「全社で安定して使える状態」まで段階に分かれていて、いきなり最終段階を目指すのではなく、いま自社がどの段階にいるかを見極めることが重視されています。

発注側として大事なのは、お試し導入を頼むときに「これがうまくいったら、次にどう広げる想定ですか?」を一言聞いておくことです。広げる段取りまで描けている提案かどうかで、その後の進めやすさが変わってきます。

2. 「どのデータを使い、誰が見るか」が品質と安心に直結する

SnowflakeとAnthropicの発表が示しているのは、AIを自社が管理しているデータの上で動かすという考え方です。AIに何でも自由に渡すのではなく、使ってよいデータの範囲を決め、誰がどう確認するかを整える。この「管理・統制」が、成果の質と情報の安心の両方に効いてきます。

発注側として確認しておくとよいのは、「AIに渡すのは、どのデータですか?」「その結果は、誰がどう確認しますか?」という2点です。「自動化されます」だけで終わらせず、人が確認する工程がどこに残るのかをはっきりさせておくと、後の運用でつまずきにくくなります。

3. 「自社で作り込む」か「既存のサービスで足りる」かの見極め

MITの調査では、外部の事業者が提供するAIサービスを使ったほうが、自社でゼロから作り込むより成果につながりやすい傾向があった、とも報告されています。もちろん、自社サービスに独自の機能を載せたい場合は作り込みが必要です。一方で、社内の業務改善のように、すでにあるサービスで足りる用途もあります。

発注側としては、「これは作り込む必要がある話か、既存のサービスで足りる話か」を、開発会社と一緒に切り分けておくのがおすすめです。なんでも作り込もうとすると、費用も期間もふくらみやすくなる、と言われています。

管理されたデータを人が確認しながらAIを広げる様子
管理・統制しながら広げる(イメージ)

いま動くべきか、様子見か

「自社のAI活用を、いま本格的に広げる準備を始めるべきか」については、おおむね次のような分け方が現実的です。

共通して言えるのは、「AIを入れるかどうか」ではなく「どの範囲で、どう管理しながら広げるか」へと論点が移ってきた、ということです。受託開発会社にとっても、説明しやすいテーマになってきています。

まとめ

2026年の企業AIは、「試す」段階から「根付かせて広げる」段階へと関心が移っています。発注検討の場面では、次の3点を意識しておくとよさそうです。

新しい技術が次々に出てくる時期ですが、慌てて全部を取り入れる必要はありません。いま自社がどの段階にいるかを見極めて、一歩ずつ広げていく。具体的に発注を進める段階では、開発会社にこの3点を相談するところから始めてみてください。

参考リンク